2)天敵の導入
果樹では主要害虫のうち侵入害虫とされるものは6種ある。そのうち4種はすでに天敵の導入によって一定レベルの防除成果が得られ天敵利用の成功例とされている。
しかしながらこれらの例についてもその後の薬剤散布気象条件などによって局地的に有効天敵が減少し害虫の多発が起きる事がある。
効果を維持するためにはこれらの天敵を殺虫剤の影響から保護し、必要に応じて増殖したものを放飼する体制を作る努力が必要である
在来害虫に対して外国から天敵を導入した例を第2表に示した。何れの場合にも失敗とされている。このような結果は外来害虫に対しては導入した天敵と生態的同位者が存在する場合が多いこと、放飼技術の不備、導入種の選択が不適切などが考えられる。
在来害虫はすでに天敵相が確立していると考えられるので、侵入害虫に対する天敵導入の場合の数倍の努力が必要と考えられる。しかし、チリカブリダニが在来害虫であるハダニ類に卓効を示していることを考えれば近縁種の天敵の中から有効なものを選択する努力をさらに続ける必要がある
天敵の導入経過
害虫名 |
樹種 |
天敵名 |
|
導入先 |
結果 |
イセリアカイガラムシ |
カンキツ |
ベダリアテントウ |
Rodolia cardinalis |
Formosa(1911) |
成功 |
ルビーロウムシ |
カンキツ |
ルビーアカヤドリコバチ |
Anicetus beneficus |
|
成功 |
|
カンキツ |
|
Scutellista cyanea |
U.S.A(1924) |
失敗 |
ミカントゲコナジラミ |
カンキツ |
シツベストリーコバチ |
Encarsia smithi |
China(1925) |
成功 |
リンゴワタアブラムシ |
リンゴ |
ワタムシヤドリコバチ |
Aphelinus mali |
U.S.A(1926 |
失敗 |
|
|
|
|
U.S.A(1928) |
失敗 |
|
|
|
|
U.S.A(1931) |
成功 |
ヤノネカイガラムシ |
カンキツ |
ヤノネキイロコバチ |
Aphytis lingnanensis |
U.S.A(1955) |
失敗 |
|
|
|
Aphytis lingnanensis |
China(1976) |
失敗 |
|
|
ヤノネツヤコバチ |
Aphytis yanonensis |
Chaina(1980) |
成功 |
|
|
ヤノネツヤコバチ |
Coccobius fulvus |
China(1980) |
成功 |
クリタマバチ |
クリ |
チュウゴクオナガコバチ |
Torymus sinensis |
Chaina(1979) |
成功 |
ナシヒメシンクイ |
ナシモモ |
|
Macrocentrus ancylivorus |
U.S.A(193) |
失敗 |
|
|
|
Clypta rufiscutellaris |
U.S.A(1934) |
失敗 |
ミカンハダニ |
カンキツ |
i |
Amblyseius newsam |
China(1981) |
失敗 |
|
|
|
Amblyseius fallacis |
U.S.A(1982) |
失敗 |
コナカイガラムシ |
カンキツ |
|
Cryptolaemus montrozieri |
Hawaii(1931) |
失敗 |
ニセナミハダニ |
ブドウ |
|
Phytoseilulus persimilis |
U.S.A(1966 |
失敗 |
ゴマダラカミキリ |
カンキツ |
|
Neoaplectana carpocapsae |
U.S.A(1980) |
失敗 |