セイタカアワダチソウをごちそうにしている蛾の幼虫とその天敵

セイタカアワダチソウと昆虫の環−(1)

セイタカアワダチソウは帰化植物として最も有名な存在です。1900年代に侵入して1940年代から全国至る所で繁茂し、黄色い花は秋の名物になっています。このような植物を餌にする昆虫は雑草の天敵として重要視されますが、セイタカアワダチソウを好んで食べる昆虫はなかなか出現しませんでした。牛久自然観察の森には草地の刈り取りをしない区、1−5回の刈り取りをする区が観察のため設けられています。この草地にもセイタカアワダチソウが侵入しています。ここで面白い現象が見られました。刈り取りをしない区ではセイタカアワダチソウは2m以上にも成長し、盛大に黄色の花穂を垂れています。しかし、刈り取り回数が増すとセイタカアワダチソウの密度が少しづつ少なくなることがわかります。刈り取りをするので背が小さくなり、栄養の蓄積ができないのがこの現象の最大の理由と思われます。年1回の刈り取り区ではセイタカアワダチソウはまだ優占種です。しかし、そこではセイタカアワダチソウを餌にする蛾の類が大発生しているのです。この蛾の詳しい種名はまだわかりません。でも、この植物を好む昆虫がとうとう出現したことは確かです。発生の条件はこの蛾の成虫発生時期にセイタカアワダチソウの柔らかい葉があることです。その証拠に刈り取りをしないセイタカアワダチソウの葉はその時期に硬化しているので、全く食害は受け付けないのです。いつ刈り取りをすればこの蛾の発生に最も都合がよいかはまだわかりませんが、人と昆虫が協力してセイタカアワダチソウの繁殖を少しでも押さえることができれば楽しいと思います。

セイタカアワダチソウと昆虫の環−(2)

セイタカアワダチソウを餌にする昆虫の出現は頼もしいことですが、この蛾の幼虫に寄生する蜂も同時に現れていました。すべての昆虫には天敵が存在し、昆虫の無限の増加を抑制することが知られています。牛久自然観察の森ではこの寄生性の蜂(コマユバチ)の寄生率は60%にも達します。蛾の蛹とは似てもにつかぬ堅い繭を作り、赤い胸と黒い羽を持った美しい蜂が羽化してきます。この蜂のおかげでセイタカアワダチソウの被害は壊滅的にはならないのです。ちょっと残念ですが生態系では自然のことなのです。でもこのコマユバチにも天敵がいます。それはやや小型のカタビロコバチです。たぶん繭を作っているときに襲撃するのだと思いますが、コマユバチの堅い繭からたくさんのカタビロコバチが羽化するのです。このような蜂を2次寄生蜂と呼びます。農作物の場合2次寄生蜂は悪者と定義される場合が多いのですが、人間から見るとこのカタビロコバチは益虫です。ややこしいことになりました。

アワダチソウのヨトウガと天敵のヒメバチの繭

ヨトウガの蛹

ヨトウガに寄生するヒメバチの成虫