16.ジェット噴射の仕掛け    アザミウマの前翅裏面 



アザミウマ類は体長約1mmの微少な昆虫である。この昆虫は特に変わった型の翅と口器を持つことで知られている。その翅は細長く、翅脈は退化し、そのかわりに周縁に多数の長い縁毛をを備えていて、総のようなので総翅目という名前で分類されている。この縁毛は基部の関節(soket)が8字状になっており、飛行する直前に翅に直角にそろえることが知られている。
ところでアザミウマのような昆虫がどのようにして飛ぶのかは余りよく知られていない。飛び立つ前の動作や飛び立つときにはじかれたように飛び立つこと。空中では直線的ではなく緩やかな曲線や螺旋を描きながら飛ぶことが観察されている。またホバリングを行うことも知られ、筋肉の動きと飛行の関係についての報告もある。このアザミウマ類の飛行機能と翅の構造の間に密接な関係を持つのではないかと思われる事実が走査電子顕微鏡による観察で発見された。アザミウマ類の翅の形態は分類学者によって調べられ族の区別にも使われている。しかし、調査に使われた形質は主として翅の表面に関する情報であり、翅の裏面の形態についての報告はなかった。翅の裏面には気管につながる特殊化した排気口(バルブ)があり、空気の排出によってホバリングや方向の制御をしていると考えられる。この排気口は種類によってその構造が異なる。チャノキイロアザミウマでは中央に一個のエア−バックが見られ、その近くに球形のストッパ−を伴ったエアの吹き出し孔が見られる。