19.小便は身につけないマナ− 

ルビ−ロウムシの甘露分泌



 ロウムシ類は果樹を始め多くの庭木にも寄生するので一般の人々にも良く目に付いているはずです。しかし、あの白や紫の蝋の固まりの中にどんな虫が入っているかを想像できる人はあまりいないのではないでしょうか。ロウムシは長い口吻を植物の組織(篩管)の中に差し込んで糖やアミノ酸のような栄養分を横取りしているのです。養分を体内に取り込んだ後に、不要成分と水は排泄孔から体外へ定期的に排泄されます。これは一般にハニ−ヂュ−(甘露)と呼ばれるものです。良く知られているようにアブラムシとアリはこのような排泄物を仲立ちとして共生関係を結んでいますが、ある種のカイガラムシ類にもアリとこのような関係を持つものがあるのです。ロウムシ類もこの仲間です。甘露の分泌は定期的に大なわれるのでロウムシのように全く動かない昆虫では生死の判別に利用されます。そのほかに甘露の分泌はアリが触角でロウムシの排泄孔付近をたたくことによっても起きます。甘露分泌行動はすばやく行われるので良く見ていないと何が起きているのかわかりません。まづ排泄孔を閉じている三角板が開き、中から6本のイソギンチャクの触手のようなものが出てきます。この触手は傘の ように開き中央の孔から甘露が球状に分泌されます。アリはこれをすばやく口管に取ります。アリがいない場合には急速に触手が閉じ、その力で甘露は落下します。甘露は果物や葉の表面に付くと糖分が多いため、黒黴の絶好の餌となり、すす病と呼ばれる症状をもたらします。




固着しているカイガラムシですが普通の昆虫のように脱皮を行って成長します。この虫は見事にこの脱皮をやってのけ、写真のように蝋の下から脱皮殻を押し出してよこします。
一方、ロウムシ類にだけ寄生するアカヤドリコバチと呼ばれる寄生蜂が存在します。この蜂はロウムシの2例幼虫−成虫にまで寄生行動をしますがその際、アリの行動を盗みとった行動をします。ロウの下に生きた虫(寄生に適した)がいるかどうかを判定するために、この蜂はロウムシの背中を触角でたたきながら数回往復します。特に排泄孔周辺をアリのようにたたきます。カイガラムシが間違って甘露の分泌行動をすると寄生蜂は生きている寄主と認め直ちに産卵行動に移ります。だまされなかったカイガラムシに対しても寄生蜂はさらに詳しい接触を行い、産卵管の挿入による化学的な判定をして産卵行動の決定を行うことが知られています。