17.昆虫はどうやって呼吸をしているか?
昆虫は生き物なので呼吸をします。脊椎動物のように口から空気を吸い込んで吐き出すというようにはいきません。胸と腹に少なくとも2対の気門を持っていて体の各部分に毛細気管で空気を供給しています。したがって、昆虫の息の根を止めるには気門をすべて塞ぐか、気門からの空気の出入りを制御している筋肉の働きを止めればよいのです。
殺虫剤の大部分のものは昆虫の神経細胞に作用して筋肉の働きを停止させる働きがあり、昆虫は窒息死するのです。また、物理的防除法といわれるマシン油乳剤や界面活性剤もこの気門に働きかけて気門をふさいだり、気門から水が入るようにして窒息死を期待するものです。
ではこのような窒息の危機に対して昆虫はどんな防御装置を持っているのでしょうか?
カイガラムシ類は動かない昆虫の代表ですが、胸部と腹部に対になった気門があり、その開口部は他の昆虫と同じように微生物や埃の侵入を防ぐ構造になっています。気門の周辺にはカイガラムシの種類によって様々な型や数のワックス分泌孔があります。その分泌孔からはスパゲッテイのような白色のワックスが分泌されます。この糸状ワックスは毛糸玉のようになって気門の開口部をふさぎ、エア−フイルタ−の役目をするのです。またカタカイガラムシ類のある種のものは寄主植物に密着して生活しますが、このような種類では気門の開口部から体側の空気採り入れ口までワックスの突起があり、空間を作る。体側に分泌孔があり、そこから樹枝上のワックスを形成してフイルターとする。
その中でもアザミウマ類の気門は最も華麗な美しさを持ったものでしょう。成虫、幼虫とも胸部に2対腹部に2対の気門があります。この写真はチャノキイロアザミウマの幼虫の胸部第1気門です。
ヤノネカイガラムシの胸部気門(マカロニ状のワックスがフイルタ−の役目をしている)とフイルタ−を除いた状況
アカマルカイガラムシの気門(周辺の細かい突起がフイルタ−の役目をする)
ミカンワタカイガラムシの気門(気門からリングを重ねたようなフイルタ−が形成される)
チャノキイロアザミウマの気門のいろいろ