屋根は自前で作る−こてとへらを持つ職人 カイガラムシの屋根作り
カイガラムシは柔らかい体表を守るために堅い殻で体を保護しているものが多い。このような殻はみの虫のように借り物ではなく、自前で作る場合が多い。その成分はワックスで、尾端の背にあるいろいろな種類の分泌孔から分泌される。一見動かない虫の代表とされますが、実は殻の下でかなり激しく動く時期があるのです。口針を軸として尾端を先端とする円周運動をするので、その動きは貝殻の型を見ればほぼ推定できます。
カイガラムシ類の体表は他の昆虫と同様にキチン質で出来ている。その他表皮にはいろいろな付属物があるが、特に尾部の臀板と呼ばれる部分では特殊な形をした刺毛が多い。この部分には陰門があるが、主として自分の隠れ家の屋根となる貝殻を作り出すワックス分泌孔が集中している。カタカイガラムシ科のものでは分泌孔は原則として2種類あり、一つはセロハンテ−プのように幅の広い堅いワックスで、これが貝殻の基本となる。もう一つは液状の柔らかいワックスを分泌する先端の細くなったチュ−ブ状のものである。そのあいだに写真のようにその機能がはっきりとはわからない樹枝状の付属物がある。アカマルカイガラムシの1令幼虫では頭部に1対のワックス分泌孔があり、ヤノネカイガラムシ1令雄幼虫でも同様である。これが体の上に堆積して薄い繭のような介殻を作るのです。
カイガラムシの尾端 矢印はテ−プ状のワックスで作られた貝殻 テ−プ状のワックスを接着するための液状ワックス分泌
分泌されたワックスを整形するための縁突起