訪花昆虫の話  



果樹の花が咲くといろいろの昆虫が飛んでくる。その目的はいろいろで、蕾のうちに来るものは悪者が多い。ツボミタマバエ(カンキツ)、ノコメトガリキリガ(モモ)、小型ゾウムシ(すべての花)などは卵を産み付けて、幼虫が食料とするため落果してしまう。花が咲いてから来る虫は受粉をしてくれる役に立つ昆虫が多い。ハチ類、アブ類、小型甲虫、一部のアザミウマなどは有益です。しかし、花の蜜だけを取り、受粉に役立たないものや、子房に傷を付け、せっかくの果実の表面を汚してしまうハナムグリ、ケシキスイ、一部のアザミウマなどの害虫もいる。クリの花のように受粉と昆虫が関係しないものでも、いろいろの昆虫が雄花に集まって吸密や花粉の採集をする。
果樹の場合、花はウメが最も早く、次にモモ、ナシ、リンゴの順に次々に咲き、クリは最も遅い。ウメの実の豊凶は開花時期の天候次第で、花粉媒介昆虫が活動できる晴天が多ければ豊、曇りの日が多ければ結実は少ないと言われている。そのため生産者はミツバチを借りてきて置き、晴天の日が多いことを願う。モモやナシ、リンゴの開花時期には気温も上昇するので、昆虫の活動に天候がかかわる程度は低くなるが、それでも晴天の温暖な日が望ましい。モモ、ナシ、リンゴの場合媒介昆虫の多少は殺虫剤を主とする前年までの園地の管理方法が影響している。リンゴの場合、集団産地が多いので、野生の昆虫にはほとんど頼れない。ハナバチ類は自分自身が花粉や蜜を幼虫の餌にするので執着が強く、利用しやすい。代表的なものはミツバチ・ツツハナバチである。訪花昆虫の条件は活動期間が果樹の開花と一致する・活動量が多く媒介能力が高い・飼育が簡単で大量の個体が維持できることである。 現在人工授粉で結実の促進が行われる場合が多い。それなりに省力的な方法も実用化されているが、さらに果樹園が大規模になれば、訪花昆虫による受粉の促進が省力的な効果を上げる。やはり自然の力 を活かした農業が理想である。
昔からのミツバチを頼る方法もアブラムシやハマキムシ、ケムシなどの発生時期に当たり、農薬によって殺されてしまうことがあった。開花期の薬剤散布は現在では脱皮阻害剤、生物農薬などの開発によって可能になっている。訪花昆虫を増殖して果樹園内に放飼する方法と果樹園の環境整備(受粉樹の植栽、防風樹の整備)によって自然環境の中で訪花昆虫を管理するのが理想である。従来ミツバチは人を刺すために管理が困難とされていたが、針を奇形化し、人間に害のないものを開発する試みもあり実用化が近い。実用上もっとも困難な点は低温(低日照)で活動する昆虫の探索である。わが国にいないことは明らかなので、現在、外国からの導入を前提に世界的な視野で探索が続けられている。その一例は南米原産のハリナシバチである。 このビデオでは果樹の花にやってくる昆虫の動きを見ると同時に、マメコバチの飼育や活動の様子、トマトのハウスなどで活躍するマルハナバチがリンゴ園ではどんな動きをするかを見る。さらに南米で受粉昆虫として活躍しているハリナシバチの働きと生態を見る。所変われば・・・ということで、アマゾンで活動する花粉媒介昆虫の標本も加えました。


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