食うか落ちるか紙一重   モモハモグリガとモモの戦い 



 モハモグリガの卵はモモの葉肉内に産み込まれる。孵化した幼虫は葉肉を餌として食べながら螺旋状に前進して、後に糞を残していく。実はこの時期にハモグリガにとっては重大な変化がモモの葉に起きている。モモハモグリガの食害部分からやや離れた場所で、葉の細胞が線状に異常増殖してカルスを形成し、モモハモグリガ幼虫が螺旋状に加害している部分を切り放す準備がされているのである。そのままではモモハモグリガの幼虫は地上に丸い葉と共に落とされて死んでしまう。ところが幼虫は生息部分が切り放される寸前に円形の生息部から脱出するように直線状に食害を始める。このようにして常に勝つのはモモハモグリガの方である。注意して見ないと、モモの葉に開けられた直径5-10mm程度の孔はハモグリガの食害によって単に食べられたものであると誤解してしまいます。昔からハモグリとモモの間にこのような戦いが繰り広げられ、落とされる寸前に脱出するという芸の持ち主となったハモグリガがモモの葉を食べる権利を獲得したのです。もし脱出前に切り落とすような敏感な品種があればモモハモグリガは生存できなくなるのです。ちなみにモモの葉に孔の出来る細菌穿孔病や、薬剤の 薬害による孔も同じようなメカニズム(アレロパシ−)だと推定されます。これは何か自分の組織に異常を感じるとその部分を切り離そうとするモモの自衛行動なのです。