円盤ノコギリで壁を切る ミカンハモグリガの芸
カンの若葉の表面にひらがなを書いたようにトンネルを作るミカンハモグリガは別名エカキムシと呼ばれている。一般にハモグリガの幼虫は葉肉を餌としているが、このハモグリガでは様子が異なっている。
幼虫の頭部を観察すると、その口器は極端に薄くなっている。また、食害痕を顕微鏡で見ると写真のように見事な箱形の食害痕を残している。これは葉の表皮細胞の片割れであり、このハモグリガが葉肉ではなく、表皮細胞の内容物だけを餌にする特別な昆虫であることを示している。
それにしても厚さ10μ程度の細胞壁を見事に切り裂いてゆく口器の使い方は見事と言うほか無い。ちなみに表皮細胞の内容物だけを餌にする昆虫はチャノキイロアザミウマも同様であるが、こちらは細胞一つ一つに穴を開けて汁を吸い取るというきわめて非能率的な方法で餌をとっている。
ミカンハモグリガに切り裂かれた表皮細胞の裏側 ハモグリガの口器1対のノコギリが見える 円盤ノコギリの歯〔大小の歯が組み合わされている