マルボシハナバエの産卵行動
マルボシハナバエはチャバネアオカメムシに寄生する珍しい寄生ハエです。その一番ユニ−クな点は産卵の方法です。寄生に適したカメムシを発見するためにこのハエははカメムシの出す臭い(シュウゴウフェロモン)を利用しているようです。
次に目を使ってカメムシを確認し、じわじわと近づきます。背後からカメムシの背中にすがるような行動をすると、カメムシは振り払うように前翅を広げます。これが一瞬のチャンスなのです。ハナバエは尾部をカメムシの小楯板の下に向け、すばやく卵を産卵管から発射します。
一方の面がやや膨らんで楕円形をした卵ですが、もう一面は平らでカメムシの体表に密着するようになっていますから、ねらった腹部前端、小楯板の下などに100%生みつけられます。外界から保護された卵は数日で確実にふ化して体表から体内に潜り込み、カメムシの脂肪や、筋肉を餌に成長します。神経や消化器官を餌にすることはないので、ハエの終令幼虫が脱出するまでカメムシは生存し続けます。生殖能力はなく、飛行もできないので生態的には死亡虫と同じでしょう。
重複産卵されたカメムシの腹背部 獲物をねらうマルボシハナバエ