綺麗に食べる洗い出しの技   ヒメハダニケシチビハネカクシ幼虫のミカンハダニ卵捕食行動



 ハネカクシはミカンハダニの卵を好んで捕食するように見える。特に幼虫は卵を好み、1日に数十個を消費する。幼虫が捕食したダニの卵をSEM(操作電子顕微鏡)で観察すると、卵の側面に大顎による一対の孔が見られる。

ハネカクシの口器は咀嚼式ではなく、突起を備えた吸汁式である。実態顕微鏡でハネカクシの摂食状況を観察すると、ハネカクシは最初頭部を左右に動かし大顎で穿孔を試みている。大顎が孔にはいると卵の内容物の吸入が始まり、赤色の内容物が口器を通り胃に入る様子がよく分かる。その後幼虫は突然胃の内容物をダニの卵の中に逆流させる。卵はこの液体で充満し、内容物を溶かして再び吸引が始まる。このような卵内面の胃液による洗浄行動を繰り返し、完全に中味を取り込み、卵は透明になる。ひとつの卵を食べ終わるまで20-30秒程度である。
 体外消化という摂食方法はサシガメ類、ベッコウバチ幼虫、ホタル幼虫等が餌の消化のために唾液などを利用することが知られているが、ハネカクシのようにごく短時間で内容物を洗い流すような摂食方法は、テントウムシの幼虫などとともに稀な例であり、体外消化には該当しないと思われる。




吸入中で卵の内容物は赤く見える                  卵の内容物は吸い尽くされる                    マンデブルを差し込んだ跡