忙しいふ化幼虫のつらい役目
チャバネアオカメムシの共生微生物とその伝搬 


カメムシ類は後腸の周辺部に盲嚢と呼ばれる大きな付属腺を持っている。その中には多量の微生物が生息し、カメムシの発育に対し、栄養分を補給する役割をしている。このような共生微生物は半翅目では広く見られ、ウンカなどでは卵巣内で経卵伝搬をすることが知られている。
カメムシ類の栄養要求を研究した釜野、野田等もカメムシの消化管に存在する共生微生物の役割が重要であることを指摘している。また杉浦等はカメムシの卵の表面に存在する共生微生物の分離培養を行い、その性質の一部を明らかにしている。チャバネアオカメムシの共生微生物は細菌の一種の桿菌で長さ5−8のもの、球形で直径2のものなどが観察されるが、野外採集虫と累代飼育虫では構成が異なるなど不明な点が多い。現在のところ培養は出来ない。
共生微生物の雌成虫から1令幼虫への伝搬方法は次のような経過による。 ふ化15−30分後にカメムシ幼虫が盛んに卵の表面を徘徊しているのが見られる。この時詳く観察すると、カメムシの幼虫は口吻を卵の表面に30−60の角度で接触させ、盛んに卵の表面を引っかいている。15−30分間このような行動を行った後に静止期に入る。この時期のカメムシの口吻や口針をSEMで観察すると口吻の先端刺毛の間には粘着物質に包まれた菌が多数あり、口針の食物吸入チュ−ブの中には菌が発見される。その後黒化した幼虫は卵塊の周辺に集まって静止状態に入り、微生物は口針から消化管に入り盲嚢に到達して取り込みは完了する。 微生物とカメムシの関係が解明されてきた結果、微生物の人為的コントロ−ルの可能性やその利用にも研究の新しい扉が開かれたものと考えている。飼育に関する不明な点がクリアになった点もある。共生微生物は一種であるとは限らず複数の可能性がある。

チャバネアオカメムシの共生菌取り込み

クサギカメムシの共生菌取り込み