一瞬でナイフをノコギリに変える虫
チャバネアオカメムシの口針−餌はお茶漬けで− 


チャバネアオカメムシは果樹の害虫として、またスギ、ヒノキの種子害虫として知られている。このカメムシの本来の餌は植物の種子である。従ってサクラやウメのような堅い種子の殻を突き通すような頑丈な口針を持つ必要がある。走査電子顕微鏡で見る口針は大さいの先端の頑丈な3−4個の歯を持つ部分とそれに続いて側面が刃を持つ蛇腹から出来ている。この大さいは対になっており、押すときにはナイフの刃のように、引くときには鋸及びアンカ−の役目をすると思われる(Lacerate-and-flush)。穿孔に従って、唾液の分泌管と餌の採り入れ管を形成する管状の小さいが挿入される。食物は細長い口針を植物の組織中に伸ばして大さいで組織を細かく砕き、唾液を分泌することによって組織片を流動化し、餌の取り込みを可能にする。そのほか唾液には口針を組織に挿入する際摩擦を少なくし、スム−ズに挿入する役割がある。口針の小さい側面の孔から分泌された唾液は挿入孔から溢れ、空気に触れて固まる。それが口針鞘(Stylet sheath)と言われるものである。従って餌が堅く、穿孔のため多量の唾液を必要とした場合には口針鞘は長くなり、柔らかい餌の場合には短くなる。組織中や表面に長い間固着しているので、どんな種類のカメムシが加害したかの判別に役立つことがある。これはアブラムシやヨコバイ類等でも同様である。餌の吸引は頭部にある口孔ポンプ(Cibarium)によって行われる。