昆虫にも結石症 −カメムシの作る芸術品−
チャバネアオカメムシの消化器は中腸に4条の胃盲嚢を持ち、マルピギ−管の開口部から後ろは直腸と呼ばれる膨大部を形成している(第一図)。この直腸内部に結晶体を持つ個体が累代飼育中の系統から発見された。この飼育系統は1978年から累代飼育中のもので、現在94世代目であり、24頭の集団から出発し、途中、他の個体を導入することなく飼育しているものである。結晶の存在場所 直腸は個体によって長さや、大きさ、壁面の状態などの変異が大きい。結晶は主としてマルピギ−管の開口部に接して形成されているので、直腸の前端に位置するものが多い。結晶の形態 結晶は長さ3mm-0.5mm
とばらつきが大きい。透明針状、棒状の結晶が一点を中心に放射状に配置したもの、板状の結晶が重なったものなど4−5種の型に分類できるが、やや黄色−褐色に着色している場合がある。直腸内の結晶の形成頻度 成虫が羽化した後の飼育条件は餌、水、照明、温度、飼育密度に関しては同一条件を与え、羽化後7−42日後のものを次のように分けて調査した。
1.交尾を行い産卵をしたグル−プ
2.羽化後交尾を行わせず、一方の性のみで飼育したもの
3.野外採集の越冬成虫(6月20日までに採集したもの)
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羽化後の日数 0−7 −21 −49
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雄 雌 雄 雌 雄 雌
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1 − − 1/20 0/20 35/237 2/178
2 0/20 0/20 5/25 − 27/150 0/30
3 0/78 0/50
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この調査から結晶体は累代飼育雄成虫に特異的に3−4週間後から形成され、日数の経過に従って増加することがわかった。生成の原因は不明である。生成物の化学成分については分析中である。
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直腸内に結晶体を含んだ雄の個体
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直腸から取り出された結晶体(1.8mm)
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