チャバネアオカメムシの行動予測 


チャバネアオカメムシは成虫で越冬し春先には餌を求めて種々の植物の間を移動する。その数は記録されただけでも餌植物として112種類、その内摂食して卵巣の発育が見られる寄主植物が25種類にも及ぶ。

栽培果樹の果実はこの80種類の餌植物には含まれるが、増殖には不適当な餌である。しかし、野生種のリンゴ近縁植物(カイドウ、ズミ)、ナシ(マメナシ)、ブドウ(ノブドウ、ヤマブドウ)等は寄主であるため、場合によってはカメムシの大きな被害を受ける。

カメムシが果樹園に何時どれぐらい飛来するかを予測することは重要なことである。今までの研究ではチャバネアオカメムシの越冬密度や寄主植物上のカメムシの数、誘殺灯への飛来数などカメムシの密度を調査のポイントとして予測の手がかりを得ていた。

最近視点を変えてカメムシがその地域で選ぶ寄主植物の利用可能な現存量を調査することによってカメムシの行動を予測することを試みた。カメムシはその地域にある餌のうち選好性の高いものから順次利用するという仮説の下に、餌の利用状況を調査する。

つくば市の場合季節によって利用植物はサクラ、クワ(コウゾ)、キリ、ノブドウ、サワラ(スギ)の順に変わることが知られている。そこでサクラ(果実)における利用状況を5月中旬から、サワラにおける利用状況を7月上旬から食痕数を調査することによって推定した。

利用可能な果実の現存量を絶対数で表現することは困難なので、被害果実とまだ利用可能な健全果実の比率で推定する。被害はチャバネアオカメムシ以外にも多くの他のカメムシ類によってもたらされるが、必要なデ−タ−は残存量なので支障とはならない。

残存率が10%を切るとカメムシの滞留が少なくなり、他の植物に移動するように思われる。5年間のデ−タ−を比較するとサクラでもサワラでも被害果率が80%を越えるとカメムシの移動が始まることが認められた。