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森の寄生蜂


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バンカープラントは露地野菜や果樹園だけでなく、施設における生物農薬の効率的利用の一手段として注目されている。バンカープラントには作物の主要害虫となる昆虫が棲息しないこと、餌となる昆虫が一定量は増殖維持できることが第一である。その他に忘れてならないのは利用しようとする天敵の高次天敵の存在である。通常2次寄生蜂や捕食虫の高次天敵は目立たないが、天敵を大量飼育することになるとすぐに増加して抑制要因となる。それらのものを例示してみると第1表のようになる。これらの高次天敵を除去することによって利用天敵の密度を維持することが容易になる。除去の手段としては薬剤の利用がもっとも簡便であるというのは皮肉なことであろう。

バルーンを持つムカシホソハネコバチ
この寄生蜂の寄主が何であるかは謎となっている。現存するこの科の蜂は少なく,古い時代のコハク中に見いだされて記載されているものが多いのが特徴である。蜂類は腹柄が腹節の変化したものである。しかしこの蜂では第2腹節・第3節も腹柄を形成している。この特徴はアリ属では普通なので,ムカシホソハネコバチは蜂と蟻つなぐchain species であるといえる。もう一つの大きな特徴は前はねの中央部にキチン化した網状の膨張部を持つことである。すべての蜂類の前はねは表裏一体であるが,この蜂では風船のように表と裏ははっきりと区別されている。機能的には空中浮遊に適応していると考えられる。
この生きている化石は始めコハクの中で発見され記載されたが,生きているものが発見されたのは1955年同じヨーロッパであった。わが国に棲息することは吸引粘着トラップが使用されるようになっ1970年代で捕虫場所は茶園であった。その後カンキツ園、ナシ園、ダイズ圃場など各種作物の園地で捕らえられている。このことから日本全国に棲息する普通種と思われるが個体数は少ない。1mm以下の小型の蜂なので見るみる機会はほとんどなく,ホソハネコバチに間違われている可能性が高い。寄主卵が何かは特に興味深い。コハクが生じた何億年前から棲息していた昆虫だろうと想像されるからである。

昆虫の卵に寄生する蜂の特徴
昆虫の卵に寄生する寄生蜂はたくさんいるが,キイロタマゴバチ科に属するものには後ろ脚の附節が3節であるという絶対的な特徴を持つので,他の蜂から容易に区別できる。この科は世界中に分布し,多様化が進んで90属ほど記録されている。形態的には1mm以下のものが多く,はねや触覚に変化が多い。同じ昆虫の卵に寄生するにもかかわらず,形態に差があるのは寄主卵の産卵場所の特異性に適応したものと考えられる。水中に産卵された卵に寄生するには,水に潜る必要があり,植物の組織内深く産卵されたもの,オトシブミ卵のように葉にくるまれたものには長い産卵管が必要である。寄主が特定されていない蜂も多いので,形態から対象昆虫の産卵場所や種類を想像するのは楽しいものである。アザミウマの卵(長さ0。2mm)に寄生するためには自分自身が更に小型化する必要のあったアザミウマタマゴバチはとうとう世界一小さな昆虫という記録を作ってしまうことになる。

白い蜂の謎


いちばん小さなカメムシと大きなカメムシ


毛のあるカタツムリと甲羅のあるナメクジ


ヒメハナカメムシの捕食行動


クサカゲロウのアブラムシ捕食行動


グンバイに変装したグンバイメクラガメ

ハモグリバエはどこにでもいる小さなハエの仲間である。植物の葉に産卵して、幼虫が葉の組織をトンネルを掘るように食べ進むので、ミミズが這ったような跡ができる。小型のガの類(ハモグリガ、ホソガ)にもこのような生態の虫が多いのでちょっと区別が難しい。分類上は植物の種類に負けないぐらいいろいろの植物に適応した種類がいるので、花や野菜を作る人たちにとってはやっかいな虫とされている。最近外国から侵入して話題になっているマメハモグリバエもこの仲間である。このハエの成虫には奇妙な習性がある。通常昆虫が餌をとるためには口器で囓ったり、口針を刺して液を吸ったりする。この虫の成虫は産卵管を使って葉の表面に穴をあけ、そこからさらに葉の組織を産卵管を伸ばして破壊する。そして穴からあふれ出た汁液を舐め取るのが一連の摂食行動である。そこで疑問が残る。雌はそれでよいが産卵管を持たない雄はいったいどうして餌にありつくのだろうか。答は簡単である。このハエの雄は雌の後ろにしつこくつきまとい、餌のおこぼれに預かると同時に交尾もするという特清を発達させている。雌が性フェロモンを出しているかどうかは不明である。


クサカゲロウ幼虫の摂食


アリジゴクやカゲロウの幼虫が食物を捉えたとき、その内容物を取り込むのに牙を使うことはあまり知られていない。形や動きから牙にかかった獲物をその間にある口器で咀嚼し取り込むような先入観を持つことが多い。しかし少し観察を続けていればカゲロウの幼虫はくわえたアブラムシを牙で持ち上げたままじっと動かないのがよくわかる。そのうちにアブラムシの体はしぼんで小さくなり投げ捨てられる。牙をよく見るとそれは対になった雨樋のような半月形の管で、なめらかに交互に動かして液体を吸い込んでいるのがわかる。


コナガの排糞と排尿


鱗翅目の昆虫の排泄行動で目立つのはボクトウガやコウモリガの糞、アゲハチョウの排尿などでしょう。一般的には粒状の糞を一粒づつ出すのです。ハモグリガやハマキムシでは自分の食害葉の中にこれをため込む習性を持つものもあります。野菜の大害虫として最近では生産者の敵となっているコナガではどんな様子でしょうが。この虫は食事をしながら5−7分ごとに排糞をしますが、その後30秒で小さな水滴にした尿を必ず排出します。このように糞と尿を別々に出すものは珍しいのではないかと思います。

セイタカアワダチソウと昆虫の環−(1)

セイタカアワダチソウは帰化植物として最も有名な存在です。1900年代に侵入して1940年代から全国至る所で繁茂し、黄色い花は秋の名物になっています。このような植物を餌にする昆虫は雑草の天敵として重要視されますが、セイタカアワダチソウを好んで食べる昆虫はなかなか出現しませんでした。牛久自然観察の森には草地の刈り取りをしない区、1−5回の刈り取りをする区が観察のため設けられています。この草地にもセイタカアワダチソウが侵入しています。ここで面白い現象が見られました。刈り取りをしない区ではセイタカアワダチソウは2m以上にも成長し、盛大に黄色の花穂を垂れています。しかし、刈り取り回数が増すとセイタカアワダチソウの密度が少しづつ少なくなることがわかります。刈り取りをするので背が小さくなり、栄養の蓄積ができないのがこの現象の最大の理由と思われます。年1回の刈り取り区ではセイタカアワダチソウはまだ優占種です。しかし、そこではセイタカアワダチソウを餌にする蛾の類が大発生しているのです。この蛾の詳しい種名はまだわかりません。でも、この植物を好む昆虫がとうとう出現したことは確かです。発生の条件はこの蛾の成虫発生時期にセイタカアワダチソウの柔らかい葉があることです。その証拠に刈り取りをしないセイタカアワダチソウの葉はその時期に硬化しているので、全く食害は受け付けないのです。いつ刈り取りをすればこの蛾の発生に最も都合がよいかはまだわかりませんが、人と昆虫が協力してセイタカアワダチソウの繁殖を少しでも押さえることができれば楽しいと思います。

セイタカアワダチソウと昆虫の環−(2)

セイタカアワダチソウを餌にする昆虫の出現は頼もしいことですが、この蛾の幼虫に寄生する蜂も同時に現れていました。すべての昆虫には天敵が存在し、昆虫の無限の増加を抑制することが知られています。牛久自然観察の森ではこの寄生性の蜂(コマユバチ)の寄生率は60%にも達します。蛾の蛹とは似てもにつかぬ堅い繭を作り、赤い胸と黒い羽を持った美しい蜂が羽化してきます。この蜂のおかげでセイタカアワダチソウの被害は壊滅的にはならないのです。ちょっと残念ですが生態系では自然のことなのです。でもこのコマユバチにも天敵がいます。それはやや小型のカタビロコバチです。たぶん繭を作っているときに襲撃するのだと思いますが、コマユバチの堅い繭からたくさんのカタビロコバチが羽化するのです。このような蜂を2次寄生蜂と呼びます。農作物の場合2次寄生蜂は悪者と定義される場合が多いのですが、人間から見るとこのカタビロコバチは益虫です。ややこしいことになりました。

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