スリポ−ル(Oriius sauterri) ナミヒメハナカメムシ

製品の姿

ナミヒメハナカメムシ

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ヒメハナカメムシの特徴
ヒメハナカメムシの成虫の体長は約3mmで体色は暗い茶色で翅には茶色又は灰色の模様がある。雌成虫は最高3ヶ月間生存し、その間に最高130個の卵を植物組織中に産卵する。卵はふ化後5齢を経過して成虫になる。幼虫は雑食性の捕食者で餌となる昆虫が不足した場合には共食いもする。
使用方法
1)ミナミキイロアザミウマの密度がは葉当たり1頭前後の時、株当たり1−2頭放飼する。本種は比較的増殖が早いので1−2回の放飼でよい。
2)1ボトルに成虫500頭が入っているので、作物の密度に応じて増減する。

 

日本産ヒメハナカメムシ類各種の概観


1コヒメハナカメムシOrius minutus
Orius属の中で最も分布が広く,日本では本土全域と対馬,隠岐島など一部の島嶼からも発見される。ナス,キュウリ,ダイズ,キク,トウモロコシなどいろいろな作物上に多い。 

2 ナミヒメハナカメムシOrius sauteri
 日本本土全域に普通で,ことに西日本では個体数が多い。一般に半鞘翅、脚は淡色であるが,東北,北海道寒冷地の個体では,体全体が黒化する傾向がある。こうした黒化型の個体は西日本でもまれにみられる。ミナミキイロアザミウマの生物防除に最も期待が持たれる種である。 本種の和名は,従来“ヒメハナカメムシ”と呼ばれていたが,このグループ全体の呼称と重複するので改称された。 

3 タイリクヒメハナカメムシ
 本種は中国南部を産地とすると考えられ,我が国においては九州・四国の太平洋側・紀伊半島南部で多数個体が採集される。生息地ではコヒメハナカメムシと混棲するうえ,外観的に区別するのが困難なので,同定には雄交尾器を精査する必要がある。 

4 ツヤヒメハナカメムシ 
 本種は日本本土ほぼ全域に知られ,前3種と同じ亜属に含まれるが,他種との区別は容易である。関東〜西日本の水田や,イネ科雑草のはびこる荒れ地に多く,ナス,ピーマン,カボチャなどの作物上でも見つかる。 

5 ミナミヒメハナカメムシ 
 沖縄本島南部から見つかっている特異な種で,中国南部・東洋熱帯・豪州・ミクロネシアに広く分布する。本種は前胸背、雄交尾器の形態が独特で,既知の亜種には当てはまらない。

6 ケプカヒメハナカメムシ 
 Orius亜属に含まれる未記載種と考えられるもので,雄が未知であるため新種として記載されていない。Orius亜属は前胸背側角に合計4本の長い剛毛を有することで,一見してHeterorius亜属とは区別可能である。  

 耕作地に普通なヒメハナカメムシ類の外観による種の区別法



 1〜6の各種のうち,耕作地に普通にみられ,同じ作物上で混棲するHeterorius亜属に含まれるものはナミヒメハナカメムシ,コヒメハナカメムシ,タイリクヒメハナカメムシ,ツヤヒメハナカメムシの4種である。関東以北にタイリクヒメは分布せず,ツヤヒメも少ないようだが,ナミヒメとコヒメは普通に混棲する。この中で,ツヤヒメハナカメムシだけは一見して区別が可能であるが,残りの3種を外観的に,あるは雌成虫だけで確実に識別する方法はまだない。しかし以下の検索表を用いればかなり正確に種を区別することが可能である。

1.前胸の四隅には顕著な剛毛がある(図−1D)・・・・・・・・・・ケブカヒメ
一 前胸の四隅に剛毛はない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
2.前胸背・小楯板の毛は短く不明瞭(B)・・・・・・・・・・・・・・・ミナミヒメ
ー 前胸背,小楯板の毛は明らか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
3.頭部前葉は淡色。前胸背は毛が少なく,点刻も疎で光沢強い(C)…・…‥ツヤヒメ
ー 頭部全体暗色。前胸背は密に毛を生じ,点刻も明ら か・・・・・4.
4.後脚腿節は通常淡色。暗化する場合は半鞘翅、脛節も同様に黒化する‥ナミヒメ
ー 後脚腿節基半部は通常暗褐色。淡色の場合でも脛節は普通暗化せず,半鞘翅は楔状部を  除いて淡色…5
5.半鞘翅楔状部は広く暗色で,淡色の革質部との色調差がはっきりしている…タイリクヒメ
ー 半鞘翅楔状部は通常先端部が狭く暗化する,全体的に暗化する場合でも革質部との色調    差は目立たない・・・・・コヒメ  

 

雄生殖器を用いた同定

 
 ナミヒメ,コヒメ,タイリクヒメの3種については,雄生殖器の左把握器の形態を検鏡する。ヒメハナカメムシ類は左側の把握器だけが腹部第9節の背面側に露出している(図−2A)。サンプルを70〜80%アルコール標本にして翅の後方部をめくれば,その形態を見ることができる。以下、ナミヒメ、コヒメ、タイリクヒメ3種の把握器を用いた検索表を記す。

1.Flagellumは短く、基部が明らかに膨大し、cornは先端で狭まらず、尖らない。・・・・・ナミヒメ
 −Flagellumは明らかに長く、cornは扁平で基部は幅広く、先端で狭まる。・・・・・・・・・・・・2
2.denticuleは顕著で、Flagellumの基部とほぼ接する・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・コヒメ
−denticuleは小さく、cornの先端に寄って位置する。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・タイリク

スリポ−ル
タイリクヒメハナカメムシ
ナミヒメハナカメムシ(アズキ)

図−1 ヒメハナカメムシ頬の頭部及び前胸背  A:コヒメハナカメムシ(♂),B:ミナミヒメハナカメムシ (♂),C:ツヤヒメハナカメムシ(♀),D:ケプカヒメハナカメムシ(♀).

図一2 ヒメハナカメムシ頬♂腹部末端模式図 (A)及び左把握器(B−D)  A&B:タイリクヒメハナカメムシ,C:ナミヒメハナカメムシ,D:コヒメハナカメムシ.
1:corn,2:flagellum,3:denticule.