試験圃場:6月中旬に定植した圃場(3a)の2カ所に0.6mm目のスクリーンを高さ1.5mまで張り、3試験区を設けた。それぞれの中央に吸引粘着トラップを配置し、試験薬剤処理区、標準薬剤処理区、薬剤無処理区とした。試験圃場の両側にシロツメクサを播種し、天敵の涵養場所と想定し、天敵の移動などについての予備的調査も行った。
薬剤処理:7月20日にフタスジヒメハムシ、ダイズサヤタマバエの防除を想定して試験薬剤(アセフェ−ト水和剤1000倍)を散布した。また8月31日カメムシ類の防除を想定して試験薬剤(アドマイヤ−水和剤1000倍)を散布した。それぞれ対照薬剤(トレボン乳剤1000倍+ランネ−ト水和剤1000倍+サンマイトフロアブル1000倍)を散布した。

調査方法:ダイズ定植時から11月中旬まで、試験区毎の天敵の活動状況を確認するため、吸引粘着トラップで7日毎のモニタリングを継続した。薬剤散布後直後は24時間ごとに吸引粘着トラップによって天敵の活動状況を14日間モニタ−した。同時に、ハダニとその天敵をモニターするために7日毎に100小葉をサンプリングし、実体顕微鏡下で各種害虫・天敵の生息数を精密調査を行った。

影響調査の解析
1.薬剤散布後24時間毎の捕虫数を順次計算する。
2.各調査区について試験薬剤散布日までの7日間の捕虫数と散布後7日間毎の捕虫数の比を求める。
3.無散布区の比率を基に補正値を求める。
4.補正値を100から引き,影響指数とする。
5.グラフを添えて順次示す。

結果
1.寄生性天敵はキイロタマゴバチ類を調査対象とした。対照薬剤区を設定したため効果の判定が容易にできることが判明した。キイロタマゴバチに対するアセフェ−ト水和剤の影響は無処理区に比較していずれの時期も30%以下であり影響は少なかった。24時間毎のデ−タもこの結果を明確に示している。アドマイヤ−水和剤のキイロタマゴバチ類に対する影響は対照薬剤とほぼ同等の強い影響が2週間目まで見られたが3週間目には影響が見られなかった。24時間毎のデ−タでは7−8日目には影響が少なくなっていることを示している

2.捕食性天敵はヒメハナカメムシ類を調査対象とした。アセフェ−ト水和剤のヒメハナカメムシ類に対する影響は対照薬剤とほぼ同等の強い影響が2週間目まで見られたが、3週間目には影響が見られなかった。24時間毎のデ−タでは7−8日目には無散布区と同程度の活動が見られることを示している。アドマイヤ−水和剤のヒメハナカメムシ類に対する影響は調査対象天敵が少発生であったため判定は不可能であった。24時間毎のデ−タでは13−14日後には影響が消失したことを示している。

3.ハダニ捕食性天敵はカブリダニ類・ハダニアザミウマを調査対象とした。アセフェ−ト水和剤のカブリダニ類に対する影響は明らかに2週間目まで見られた。対照薬剤区では3週間目にも影響が強く残ったのに対して、アセフェ−ト水和剤では影響が見られなかった。アドマイヤ−水和剤のカブリダニ類に対する影響は調査対象天敵が少発生であったため判定は不可能であった。ハダニアザミウマに対する影響は対照薬剤では3週間目まで悪影響が強く見られたのに対して、アドマイヤ−水和剤では影響が少なかったことは明らかであった。
4.薬剤散布に対する影響が対照薬剤区を含めて全く見られなかった捕食虫はハプロスリップス類であった。この虫の生息場所は不明であるが地上部に主な生活の場があることが予想される。

以上の結果は室内試験で強い影響が認められた薬剤でも、野外圃場ではその影響が弱められることを示している。ただし、この試験法では調査区の面積や周辺環境の状態によって異なった結果のでる恐れがある。従って、現場に適用する条件を明確にする必要がある。

2.3年間の調査結果から、野外圃場における農薬の影響試験法としてここに示した方法はコストおよび精度の点でほぼ妥当であると考えた。