ハマキムシ類に対して顆粒病ウイルス(GV)、核多角体ウイルス(NPV)の利用がある。リンゴコカクモンハマキは幼虫が葉をつづって食害するが、第二世代・第三世代の幼虫は果実にも加害する。特に葉と果実が接触している部分に隠れて食害し、”なめり果”と呼ばれる商品価値のない果実をつくり出す。 リンゴコカクモンハマキは、六月に第一世代の幼虫が現れる。この時期にGVの散布を行った例を表1に示した。 GVは感染後、幼虫の体内で増殖し、老熟幼虫にまで成長した後死亡が起こる。したがって、その世代での効果は少ない。しかし第二・第三世代の幼虫密度は低下し、果実への加害が減少し、実用的に用いることができる。 ハマキムシの発生が多く、第二・第三世代の生き残りの幼虫が多いと予想される場合にはNPVを用いる。NPVは10日、14日で効果が発現するので第二・第三世代の防除に適している(表2)。 これらのウイルスの生産は現状では寄主であるハマキムシを飼育して感染させることにより行う。生産費の大部分を占めるのは病害虫の拾い出しや飼育のための人件費であり、大量生産によるコスータウンをするには、大規模な自動飼育システムを確立する必要がある。ま た将来的には寄主昆虫の培養細胞上でウイルスを工業的な手法で製造することが研究されている。果樹における現在の利用状況はまだ未登録であるため、農薬としての利用はできないことから、今後、農薬としての登録問題が解決されれば、他の農薬との混合布などもできるというウイルスの特徴を生かして、抵抗性害虫防除の有効な手段となろう。