BT剤はBacillus thuringiensisという昆虫に寄生して病気を起こさせる細菌を利用したものである。この細菌は増殖した後、細胞内に芽胞(耐久性のある種子のようなもの)と昆虫の体内で溶解すると強毒を発揮する結晶性毒素をつくる。この毒素は昆虫の体内で強いアルカリにあうと溶解するが、鱗翅目(ハマキガ類、アオムシなどを含む)の幼虫では口器や中腸で溶解し、口器を麻碑させ食害を停止させたり、消化管が麻痺して消化・吸収が不能となって死亡させたりする。したがって効果はやや遅いが、作物の被害の進行は散布直後に停止する。 一方、鱗翅目以外の昆虫では消化器内が強アルカリであるものは少ないので、有用媒介昆虫であるミツバチやマメコバチなどには全く影響がない。このような特性を生かして現在用いられているケースは、リンゴのハマキムシ類、ヒメシロモンドクガの五月防除である。遅効的なので、幼虫の生存が10日後でも見られるが、摂食を停止しているので実害はない。 現在他の果樹では登録されていないので使用できない。またこの時期の重要な害虫であるアブラムシ類などの吸汁性害虫に効果のないのは大きな欠点であり、今後他の防除手段との組み合わせ を研究しなければならない。