農薬の環境影響

環境保全型農業に関する研究の展開方向

1 農業が及ぼす環境への影響の実態と慣行農業の問題点

 1)農薬の農外環境への負荷−農薬の外部流出
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 媒体    影響を受ける可能性のあるもの   具体的な処理例
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 水      人(飲用、蓄積)、水系生物    散布(器具洗浄、廃棄)
 
 空気     人(呼吸、不快感)、有益生物   散布(燻蒸、航空散布)

 収穫物    人(食用、残留蓄積)       散布
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 2)農薬の農業内部での負荷

  散布 人(安全性)      散布コストの上昇(装備)
        害虫(抵抗性)     散布量の増加
        昆虫(天敵の減少)   害虫発生の異常化
 
 3)農外環境から農業への負荷

植生の変化 単純人工植林     カメムシの増加
植林地の荒廃 吸収性夜蛾の増加
         ゴルフ場       コガネムシの増加
 周辺の宅地化  植物の減少      天敵の減少
         夜間照明       鱗翅目害虫の増加

 4)慣行農業の問題点 (現象)           (原因)
  農薬の多用      農薬依存          コスト
             品質に対する過剰な期待   市場、消費者
             防除法の固定化       技術指導

2 環境保全型農業技術の現段階− 農薬の散布回数の削減
   天敵の利用
   性フェロモン利用
   抵抗性品種
   物理的手段利用
   栽培法の改良

3 先進諸外国における環境保全型農業の背景と研究推進の実態

4 環境保全型農業研究の今後の推進方向
 
 1)新防除技術の開発
  害虫の生理・生態的な特性の解明による特性利用防除技術

2)ボ−ダ−ゾ−ンの設置(基盤整備)
果樹園と周辺環境をはっきりと区別し、その境界地帯に害虫防除の機能を与  える。また、周辺環境への負荷を減少させる。
 
 3)果樹園の施設化(農薬散布の自動化)

果樹病害虫防除に関していえば果樹園以外の環境に影響を及ぼすような防除手段は今までも取られていない。農薬の使用に適正を欠いた場合(残液の処理、機械器具の洗浄液処理)に一部水生動物への影響、水源への影響があったことは事実であるが、本質的な問題ではない。薬剤の使用に伴う抵抗性病害虫の発生、天敵への悪影響等も果樹園内部での問題であり、周辺環境保全への負の要因ではない。農薬に関する一連の問題点はさらに積極的に農薬を活用するような生産環境の問題として解決すべきである。
病害虫以外の分野でも果樹園の存在及び営農作業が環境保全問題を生じた例は少なく、むしろ果樹園の設定自体が環境保全の一つの形態であると考える。このような立場から果樹研究と環境保全の関連は果樹園の積極的な利用を念頭に置くべきである。